「今日からこの部屋でお世話になりますっ!よろしくお願いしますっ!!」
「おーけー、おーけー。よろしくねー、ネギ君。」
「狭苦しい部屋ですが、よろしくお願いするです。」
「え?・・・ええぇーーーーー!!」

納得顔のハルナさんと夕映さんとは対照的に、
きょとんとした顔を浮かべた、のどかさんの少し遅めの絶叫が部屋に木霊した。
よほどびっくりしたみたいだけど、それも当然だ。
何しろ僕自身さえこのような事態になるなどとは、
想像すらしていなかったのだから。


第1話  子供先生の住宅事情?


『A TEACHER IN JAPAN』
偉大なる魔法使い−マギステル・マギになるための修行として、
与えられた課題を反芻する。
がたん、と一度大きく電車が揺れる。
それにしても、慣れない土地はやっぱり難しい。
待ち合わせの時間よりもかなり早く出たと思ったのに、ぎりぎりの時間帯になってしまった。
こんなことでは、幼馴染のアーニャにボケているなどと、
からかわれてもしょうがないかもしれない。
彼女は今ごろ、ロンドンで頑張ってるのかな・・・などと考えていると、
「次は〜麻帆良学園中央駅、麻帆良学園中央駅」
目的地に到着したみたいだ。

これならなんとか間に合うかな?
時計を確認しようと下を向いた途端、
周りにぎゅうぎゅうになるまで乗り込んでいた人たちが一斉に走り出した!
慌てて、その流れに飲まれないように、合わせて走り出す。
「すごい!これが、日本の学校なんだ・・・」
ウェールズの魔法学校には同期生が5人しかいなかったせいもあり、
人の数に圧倒されて、思わず声に出して呟いてしまう。

走りながら、時計を確認すると確かに遅刻寸前の時間だ。
もっと急がないと!
足に魔力を集中して、一気に加速する。
途中で、髪をツインテールにしばった少女と長い黒髪の少女の横を通り過ぎていく。
後ろから、
「・・・はた先生、ワンッ!!」
というにぎやかな声が聞こえた気がした。

そのまま職員用玄関から入り、靴を来客用のスリッパに履き替えたところで、
「久しぶりーネギ君。ここはいいところだろう?」
という声が聞こえた。そこには、待ってくれていたのであろう、
魔法先生にして、年の離れた友人であるタカミチがこっちを向いて立っていた。
「久しぶり、タカミチ!お世話になるよ!」
「おっ、ネギ先生。日本語完璧だね。発音まで違和感ないのは正直スゴイなー。」
「そんなことないよー。まだまだ勉強不足だと思うよ。」
「そうかい?ま、それがキミのいい所だろうね。
さて、さっそくで悪いけど、学園長室で簡単な説明を受けてもらうから。」
そのまま、学園長室までタカミチと2人で向かうことになった。

学園長先生には、魔法使いとしての簡単な心得、
僕がタカミチの後任として中等部2−Aの担任になるということ、
取りあえず3月までは教育実習生として先生のテストを受けてもらうということ、
そして、最後に、住む場所が手違いから用意できなかったことを聞かされた。
密かに当てにしていたタカミチも、出張が多い上に、車通勤なため、
ホームステイさせてもらうことは出来そうにないらしい。
学園長先生は孫の部屋なんてどうじゃ?なんて笑いながら言っていたが、
とてもじゃないが、そんなことを頼むわけにはいかないだろう。

加えて、指導教員として2−Aの教室まで案内をしてくれているしずな先生に、
「この辺りにアパートメントはありませんか?」
と尋ねると、
「10歳の一人暮らしで部屋を貸してもらうのは無理じゃないかと思うのよね。
学園が用意しておくのが当然なんだけど・・・ごめんなさいね。」
と言われてしまう始末。
むむ、授業よりも先に難題が出来てしまったようだ。

「ネギ先生、それではお願いしますね?」
しずな先生の声に我に返る。
どうやら教室の前まで辿りついたらしい。
気を取り直して、授業に集中しないとね。
お姉ちゃんも第一印象が大切だって言ってたし、
しっかりと先生として生徒たちを安心させてあげないと!
教室の前で、よしっと、気合を入れなおし、
「失礼しまーすっ!」
と声を出して、教室のドアをがらがらっと開けた。

結構な勢いで黒板消しが頭に落ちてきた。
ばふぅ、とやけに小気味のいい音を立てて僕の頭に命中。
さらに、その先に仕掛けてあった足掛け縄、バケツ、おもちゃの矢と、
立て続けに引っかかってしまい、頭からごろごろと回転する。
教壇にぶつかってようやく止まったが、
バケツに遮られて生徒たちの顔を見ることも出来ない。
うう・・・、いきなり前途多難かもしれない。
その後の英語の授業は全くと言っていいほど進まなかったし・・・。


放課後になると、僕はタカミチから貰った出席簿を片手に校舎を回っていた。
一通り校舎付近を見て回ったところで、
教会横の階段を下りたところにある、ダビデ像の脇に座り込んで出席簿を開いてみる。
生徒たちのパワーに圧倒されて朝はまともに授業することさえも出来なかったけど、
明日こそはみんなのことをしっかり見てあげないとね!
そのためには、クラス全員の顔と名前を覚えておかないと。

出席番号1番。相坂 さよ。1940〜ってなんだろう?
出席番号2番。明石 裕奈。バスケ部所属。明石教授の娘さん・・・?
出席番号3番。朝倉 和美。報道部。好奇心が強そうかな。
出席番号4番。綾瀬 夕映。ゆえ。図書館探検部??変わったクラブだね。
出席番号5番。和泉 亜子。保険委員。覚えておかないと。
出席番号6番。大河内 アキラ。水泳部。身長も高かったなぁ。
出席番号7番。柿崎 美砂。チアリーディング。コーラス部。音楽が好きなのかな。
出席番号8番。神楽坂 明日菜。美術部。授業中は色々言われちゃったし、頑張らないと!
出席番号9番。春日 美空。陸上部。いたずらを仕掛けた犯人の一人だっけ。
出席番号10番。絡繰 茶々丸。緊急連絡先?工学部??
出席番号11番。釘宮 円。チアリーディング。まどか。日本語は読みが難しいなぁ。
出席番号12番。古 菲。中国武術研究会。くーふぇい。中国語も難しいや。
出席番号13番。近衛 木乃香。書記。学園長のお孫さん。
出席番号14番。早乙女 ハルナ。漫画研究会。彼女も図書館探検部か。
出席番号15番。桜崎 刹那。剣道部。京都神鳴流?
出席番号16番。佐々木 まき絵。新体操部。元気のいい子だったな。
出席番号17番。椎名 桜子。ラクロス部。チアリーディング。一番前に座ってたよね。
出席番号18番。龍宮 真名。バイアスロン部。龍宮神社??
出席番号19番。超 鈴音。すごい数のクラブに所属してるや。
出席番号20番。長瀬 楓。さんぽ部。忍・・・?
出席番号21番。那波 千鶴。天文部。優しそうな人だなぁ。
出席番号22番。鳴滝 風香。双子の姉。うう、あのいたずらはちょっと痛かったよ。
出席番号23番。鳴滝 史伽。双子の妹。区別がつくようにしとかないとね。
出席番号24番。葉加瀬 聡美。ロボットにジェット??大学のサークル所属かな。
出席番号25番。長谷川 千雨。パソコンが得意。部活動には所属してないのかな?
出席番号26番。Evangeline.A.K.McDowell。困ったときがあったら相談しなさいってなんだろ?
出席番号27番。宮崎 のどか。図書委員。図書館探検部は4人もいるんだ。
出席番号28番。村上 夏美。演劇部。一度劇を見てみたいなぁ。
出席番号29番。雪広 あやか。クラス委員長。色々と頼りにしちゃうかもしれないなぁ。
出席番号30番。四葉 五月。給食委員にお料理研究会。肉まん配ってたっけ。
出席番号31番。Zazie Rainydy。曲芸手品部。留学生が4人、と。
うう・・・とっても多い。でも、頑張って覚えないと!

それにしても、大分日も傾いてきたなぁ。
今からじゃ、宿泊場所を探すのも難しそうだし、今日は野宿かなぁ。
って、あの階段を降りてくる本のタワーは一体??
・・・生徒かな?
危なっかしいなぁ。手を貸した方がいいよね!
立ち上がった瞬間に、突風が吹き荒れる。
タワーがぐらりと揺れ、上の2冊ほどが落ちていく。
それを拾おうとでも考えたのか、タワーがさらに横に移動して・・・
!!階段から落ちちゃう!!
咄嗟に呪文を唱える。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル・・・ウェンテ!!」
そのまま落下してきたタワーの持ち主を、風がふわりと包み込んでいく。
と同時に、僕自身も走りこんで、少女を身体全体で庇う。
「ふぅ・・・どうにか間に合ったかな?
あ!!出席番号27番の宮崎さんじゃないですか?大丈夫ですか!?」
「え?あれ?先生??・・・あれ?」
瞬間的に失っていた意識を取り戻したのか、
焦点の定まらぬ瞳をこちらに向けてくる宮崎さん。
わ、とっても可愛い娘なんだ。

「宮崎さんは、階段から落ちちゃったんですよ。
ダメですよ!あんなたくさんの本を抱えて歩いたりしちゃ!」
「は、はいぃ。すいませんでしたぁ。」
「でも、助けられて良かったです。怪我ありませんか?」
そう言いながら、宮崎さんの手を取って立たせてあげる。
「は、はい。大丈夫みたいです・・・けど、あの先生が助けて下さったんですか?」
「はい。はは、でも自分を間に挟んだだけですから、とてもカッコいいとは言えませんけどね。」
「ええ!?大丈夫なんですかぁ?わ、わた・・・」
「大丈夫ですよ!こう見えても結構頑丈に出来てますからね!」
宮崎さんの疑問を打ち消すみたいに言い切っておく。
少し身体が痛まないでもないが、魔法を使ってしまった以上、
騒ぎを大きくするわけにはいかないし、この方がいいだろうと考えたのだ。

「のどかーっ、大丈夫ですかっ!?」
そこに都合よく、第三者の声が割ってはいる。
「出席番号4番の綾瀬夕映さんですね。こんにちはっ!」
「は、はい、こんにちはです。先生、のどかは?」
「問題ないとは思いますが、一応保健室に連れていってもらえませんか?
僕はこの本を片してこようかと思いますので。」
「わかりましたです。のどか?歩けますか?」
「う、うん。ゆえ、ありがと。」
「それではっ、失礼しますっ!」
そこら中に散乱した本を急いで拾い集め、勢いに任せて図書館へと走っていく。
後ろから、
「あの体格で、あれだけの本を持って走れるなんて・・・やはり・・・」
「せんせーいっ、ありがとうございましたーっ」
という声が聞こえた。
綾瀬さんの発言が気になったものの、
宮崎さんのお礼の言葉で大部分が聞き取ることが出来なかった。
この発言を流してしまったのことが、後から考えると大いに失策だったのだろう。

しかも、どこまでも失策が続いてしまうのか、走り出してからはた、と気づいてしまった。
・・・この本、どこに持っていくんだろう・・・
仕方ない、宮崎さんも教室に戻ってくるかもしれないし、
取りあえず職員室に本を置いて探してみよう。
2−Aの教室前まで戻ってくると、教室内がなんだか騒がしい。
まだ、生徒たちが残っているようだ。
がらっ、とドアを開けると、
パァーンという爽快な音とともに視界が様々な色の紙ふぶきで覆われてしまう。

「「「ようこそ!ネギ先生!!」」」
「朝はごめんなさいですぅ」
「歓迎するえー」
「ネギ君、ほらほら、主役は真ん中、真ん中」
「特製肉まんいかがアルかー?」
「ネギ君、やっぱり可愛いねー。」
「ほらほら、皆さん、勝手に喋っているだけでは、ネギ先生が混乱してしまいますわ。
ネギ先生。本日はささやかながら、ネギ先生の歓迎会を行うことに致しました。」
出席番号29番の雪広さんがきょとん、としていた僕を気遣って経緯を簡単に説明してくれる。
「・・・わぁーーっ、みなさん、ありがとうございますーっ。」
「ああ、そのお言葉だけで、この雪広あやか、感無量でございますわっ!」
「はいはい、いいんちょ、トリップなら向こうでねー」
「「「かんぱーいっ!」」」
「ああ、何勝手に乾杯してますかっ!私のスピーチがまだ途中ですわっ!」
「ああ、もううっさいわねっ!もう少し静かにできないのっ!?」
「なんですってー!!この大草原のおサルさんがーっ!!」
「おーっ、今日の一戦は、どうなる!?アスナ、バーサスいいんちょー!」
「アスナに食券2枚!」
「いいんちょに4枚!」

朝の再現映像を見るかのように、唐突に始まってしまった喧嘩にあたふたしていると、
少し離れて座っていたタカミチとしずな先生に声をかけられた。
「ネギ先生、今日はお疲れ様。」
「くすくす。本当にお疲れ様でしたね。」
「タカミチにしずな先生!ありがとうございます!
・・・止めなくていいの?」
「はは、あの2人はじゃれあってるだけだからね。
いつものことだし、問題ないさ。」
「へーっ、仲良しさんなんだね。」
「どうだい?上手くやれそうかい?」
「うん、生徒たちもみんな良い子みたいだし、頑張ってみるよっ。」

「ネギくーんっ、こっち来て一緒にしゃべろーっ。」
今度は、元気のいいクラスメイトに話しかけられる。えっと、彼女の名前は・・・
「出席番号17番の椎名桜子さんですね。わかりましたーっ」
「ネギ君、かたーいっ。桜子でいいってばー。むしろ桜子お姉ちゃんがいいかなーっ」
「お姉ちゃんか・・・、ネギ君、美砂お姉ちゃんって呼んでみてー」
「美砂は彼氏に呼ばせなさいよー」
「なんで、彼氏に『お姉ちゃん』って呼ばれなくっちゃいけないのよー!
円は美少年に『お姉ちゃん』って呼ばれる浪漫が分からないのー?」
わいわいと自分たちで盛り上がってしまう。
僕はどうすればいいんでしょう?

「あ、あの。ネギセンセー。先ほどは助けて頂いてありがとうございましたー。」
チアリーディングの3人から解放されると、宮崎さんがこちらへ話しかけてきた。
「宮崎さんっ、大丈夫でしたかっ?」
「は、はいっ、あのーこれお礼の図書券ですー」
「おっ、本屋がさっそくアタックしてるぞー」
「ち、ちがいますー」
あはは、やっぱりみんないい子たちなんだなぁ。


それから、クラスのみんなと一通りお喋りをし終えた後、綾瀬さんに話しかけられた。
「あの・・・ネギ先生?ちょっとよろしいですか?」
「綾瀬さん?なんでしょう?」
「いえ、お時間は取らせませんので、少し付き合って頂けますか?」
「はい。いいですよー」
綾瀬さんの後ろについて、教室の喧騒を抜けて、廊下を少し歩き、階段脇に到達する。

「・・・単刀直入に聞きます。」
真面目な表情だけど・・・、何だろう?
「ネギ先生、貴方は魔法使いと呼ばれるものではないですか?」
「え、ええっ?な、なにを言ってるんですか?」
ど、どうしてばれちゃったんだろ?内心どきどきしながらも、何とか平静を装って尋ねる。
「実は、先生がのどかを助ける一部始終を見させて頂きました。」
「そ、それは」
「超能力、あるいは何かしらかのトリックかとも思いましたが・・・
ネギ先生はその力を隠そうとした。
つまり、人に見せるためのトリックを用いたわけではないということです。
さらには、大きな杖を持っていました。
あれは、超能力というより、魔法、と呼ばれるにふさわしい道具ではないかと思うのですが。」
「い、いえ、そのたまたまですよ。
たまたま風が吹いて、あと、杖は僕の趣味なんですよ。
アンティーク集めが趣味なものですから。」
かなり鋭い娘だ・・・。ううっ、初日からこんなピンチを迎えちゃうなんて。
「ふむ、確かにたまたま、風が吹いた、とも考えられます。
しかし、その後はどうです?
ネギ先生、貴方は、10歳という年齢でありながら、
14歳ののどかがぎりぎり運べる量の本を軽々と持ち、
さらにはそのまま走るなどという無茶をやっています。
のどかは気づいてなかったようですが、あれはかなり有り得ない光景ですよ?」
「え、えーとっ、そ、そのですね・・・」
マズイ、マズイ、マズイ、マズイ・・・。頭がパニックになりそうだ。

「安心してください。
おそらく、魔法使いであることが世間にばれるとなんらかのペナルティがあるんですよね?
私はネギ先生が魔法使いであることをばらすつもりはありません。
むしろ、魔法使いと一般人の違いをネギ先生に教えられる協力者になれるのでは、
と考えています。」
「確かに、あの、ばれてしまった際には記憶を消すように教えられていますが・・・」
もう正直、自分が何を言っているのか、分からなくなってきた・・・
「・・・記憶ですか。それは止めたほうがいいですよ?
1日でばれてしまった以上、そんなことをしてもすぐばれてしまうのは確実です。
むしろ、このように直接確認せずに、その他の方法で、
魔法使いであるという確認を得ようとするのでは、と考えられますが。」
「な、なるほど。そうかもしれませんね・・・」
確かに、そうであるような。
こんな正直に言ってくれる機会はなかなかないのでは?と思えてしまう。
「そもそも、ネギ先生。さきほど、記憶を消すと仰いましたね?
それは、自分が魔法使いであるということを認めた、と取ってしまって構わないのでしょうか?」
「え、あ、あの・・・はい。」
思わず認めてしまう。
あああ、お花畑の向こうで親友のカモくんが手招きしてる・・・
「やはり・・・そのような世界があったとは・・・驚きです。」
「あ、あの綾瀬さん。このことは誰にも言わないで下さい。お願いします。」
すがるような感覚で、綾瀬さんに頼み込んでしまう。
「はい、もちろん、ネギ先生が許してくれない限りは誰にも言いません。
むしろ、協力者ということで、ネギ先生のお手伝いを出来れば、と思うのですが。」
そう言って少しだけ微笑んでくれる綾瀬さんは、心から楽しそうにしていて、
きっとそれは嘘偽りない言葉なんだろうなぁ、って思える。

ほっとして、つい朝からの悩みであった住居問題を思い出してしまった。
「あ、あのそれでしたら、1つ、聞きたいことがあるんですけど。
・・・実は、住むところがないんです。」
「はい?どういうことですか?」
「いえ、もともとは学園に部屋を用意してもらうつもりだったんですが、
手違いで用意できなかったらしいんですよ。
その上、日本の不動産では、10歳の僕に物件を貸してくれるとも思えませんし。」
「なるほど。それは確かに難問ですね。」
「難問ってほどじゃないんじゃない?」
「え、そうなのですか・・・って、ハルナ!い、いつの間に!?」
出席番号14番の早乙女さんが突然話しに割って入ってくる。え、あ、あれ?
「ん?住むところがないって話からだけど。
それよりもさ、ネギ君?住むところないんだったら私たちの部屋に来ない?」
「ハ、ハルナ!?」
「のどかはネギ君のこと、気に入ってるみたいだし、夕映もそう。
私だって全然問題ないんだし、住むところ見つかるまでぐらいなら大丈夫でしょ?
このかに言えば、学園長も首を縦に振ってくれるだろうしさ。」

綾瀬さんによりオーバーヒート寸前まで追い込まれていた頭が、
ようやく再起動し、冷静さを少し取り戻すことが出来た。
どうやら、早乙女さんはその前の話は聞いてなかったようだ。
それに、生徒の部屋に住むといっても数日程度なら問題もないだろうし・・・
「いいんですか!?」
断る理由も見つからなかったので、願ったりな提案だろう。
是非ともお世話になりたいところではあるけど・・・、迷惑じゃないかな?
「もっちろん!夕映もいいでしょ?」
「・・・そうですね。構わないですよ。」
少しだけ考え込んでいた、綾瀬さんが首を縦に下ろす。
「よっし、それじゃあ、決定!!よろしくね、ネギ君っ!!」
「よろしくお願いしますっ、早乙女さん!綾瀬さん!」
そう言ってぺこり、と頭を下げる。
「あー、ダメダメ、ルームメイトになった以上、名前で呼んでくれないと。」
「ハルナ。あまり無茶を言うものではありませんよ。」
ハルナさんがにやり、といった感じの笑みを浮かべてそう言ってくる。
夕映さんが困惑したように早乙女さんに言葉を返したけど、
「いえ、僕もファーストネームで呼ぶ方が慣れていますので、構いませんよ。
それでは、改めてよろしくお願いしますっ!ハルナさん!夕映さん!」
と返事をする。うん、こっちの方がしっくりくるや。

「うっ、このように純粋な笑顔を見せられてしまうと、
先ほどの私がひどく悪人に見えてしまいます・・・。」
「ん?なんか言った?夕映?」
「い、いえ、ハルナ。何も言ってませんよ。」
夕映さんが小声で何かを呟いた後、ハルナさんがそれについてたずねている。
住むところが決まったのはよかったなぁ。
・・・でも、1日目から魔法がバレちゃったよ。
これから先、僕は魔法先生として、上手くやっていけるのかなぁ。
そんな不安を感じ取ったのか、夕映さんがこっそりと耳打ちしてくれた。
「先生、私も協力しますので、安心、とはいかないでしょうけど、
少しは信用してくださるとありがたいです。」
それだけで、嬉しくなってしまい、
「お、なになにぃ〜?さっそく内緒話〜?ゆえ〜、私にも教えてよ〜?」
「ハルナのその噂話を広める癖が直ったら教えてあげなくもないです。」
「ゆえ〜、そんなに私、信用ないの〜?」
「少なくとも、隠し事には最も向いていない人物だと思ってるです。」
「ひどっ!ネギ君〜!お姉さんはそんなことないからね〜。」
そして、こんなやり取りを聞いていると、これからも、なんとかなるんじゃないか、
って思えてしまうのだから、僕はきっとかなりの楽天家なんだろうなぁ。
「さぁ!戻りましょう!きっと、みんな待っていてくれますよっ!」
・・・こうして、僕の波乱に満ちた、学校の先生としての修行が始まったのである。

(続く)