明日はどんないたずらしてやろっかなー。
歯みがき粉を生クリームにーすり替えるとかー?
それとも、わさびをメロンシャーベットって言ってー?
やっぱりネギぼーずはリアクションが面白いよなー。
あの初日の引っかかりっぷりはサイコーだったしー。
なー、史伽もそう思うだろ・・・って、もう寝てんのかよー!
ちぇー、なんだよ、詰まんないなー。
あ、そうだ!
今度の週末はネギぼーずを学園案内にでも連れ出してやってー、
学園中引っ張りまわしてやろーっと。
それで、パフェでも奢らせてー。
くししし、早く週末にならないかなー?
by 鳴滝風香
第3話 初めての味って抹茶コーラ?
「皆さん!今日は皆さんにお願いがあります!」
僕は、少し胸を高鳴らしながら、話を切り出す。
僕の提案を受け入れてくれるのか、って。
夕映さん達は大丈夫って言ってくれたけど、でも・・・。
「放課後、特別補修を行いたいと思います。
ですから、予定の入っていない方など、出れる方がいらっしゃったら、ぜひ、参加して下さい!」
不安の反転から、一気にまくし立てるような言葉になってしまった。
うう、これで皆参加してくれなかったら、どうしよう?
「ちょっとー、何よソレ?嫌よー、高畑先生の補修なら別にいいけど・・・」
あ。
「えー、今日は部活あるから、無理―。」
あぅ。
「そうですねー、別に授業でやっている範囲でも問題ないように思いますがー。」
ええ?やっぱり、嫌がられちゃったかな・・・。
「ほらほら、皆さん!ネギ先生が困ってらっしゃいますわ!きちんとお話を聞きなさい!」
いいんちょさんにお礼を言ってから、僕は一度だけちらりと夕映さんを見る。
口だけで、『大丈夫ですよ』と喋る夕映さん。
そうだ、きちんと理由を伝えれば、きっとみんな理解してくれるはずだよ!
「僕はまだまだ未熟で、皆さんを指導するに足る能力が十分ではありません。
他の先生方よりも多くの時間を、皆さんを理解するためにとらなければなりません。
それに、僕の授業もたくさん、反省点があると思います。
ですが、これからの授業時間にそこを少しずつ修正していくのでは、
皆さんに申し訳ありませんし、僕自身、それでは遅いと思っています。」
そこで、1度大きく息を吐き、
「ですから、皆さんの性格と、英語に留まらず1人1人の学力を理解するために、
そして、僕自身が分かりやすい授業をするために、今日から一週間くらいの間、
放課後に、皆さんの時間を1時間ばかり分けてもらいたいと思いました。
皆さん!強制ではありませんが、付き合っていただけれると嬉しいです!」
いつもは騒がしすぎるぐらいのクラスが一瞬しん、と静まり返る。
「ボクは参加するよー」
「わ、私もですー」
鳴滝さん達が先陣を切って返事を返してくれる。
「お、これは負けてられないねー。ネギ君、私たちも参加ねー。
早乙女、宮崎、綾瀬、以上3名だからー。」
それに呼応するかのように、ハルナさんが声を掛けると、
後は一気に教室中に飛び火していった。
「今日は出れないけど・・・明日ならいいよ。」
「は、はい!ありがとうございます、大河内さん!」
「あ、それでもいいんだったら、2,3回は出るようにするよー」
「そだねー、部活もあるし、けど、ここで断ったら、お姉さんが廃るわ!」
「ふふ、ワタシを参加させるからには、生半可な補修では済まさないネ!」
うう、皆出てくれるみたい、すごく嬉しいや!
「アスナさん?アスナさんはどうされるおつもり?」
「うっさいわね、分かってるわよ、ばかいいんちょ!
私だって、アイツが真面目に考えて、頑張りたいっていうんだったら、
協力するわよ、ったく。」
「あら?珍しく、素直ですわね?
そうですわ!バカレンジャーの方々は強制参加ということにします!
せっかくネギ先生がクラスにいらして下さったというのに、
次回の定期考査でも学年最下位などという、
惨めな結果に終わらせるわけには参りませんわ!」
「げ、いいんちょ、余計なことを・・・」
「バカレンジャー?学年最下位?なんですか、ソレは?」
そういえば、昨日も話題に上がっていたような・・・。
「アレ?ネギ君、知らなかったっけ?
2−Aが誇る最終人型決戦兵器、バカレンジャー。
日夜、採石場で悪と戦い続ける彼女たちに、安息の日はない。
昨日も、一昨日も、一昨昨日も、そして、今日も!
そう!彼女たちは己の勉強時間を削って悪と戦っているのだ!!」
「ええっ!?ハ、ハルナさん?
そ、そんな立派な人たちがいらっしゃるんですかっ!?」
す、すごい。
もしかして、うちのクラスにマギステル・マギがいるのっ!?
「・・・ネギ先生。ハルナの作り話です。
ただ、成績の悪い5人をそう呼んでるだけです。」
そ、そうなんだ。わざわざありがとうございます、夕映さん。
長瀬さん、佐々木さん、くーふぇさん、神楽坂さんがその後に続いて、
「そのとおりでござる。」
「馬鹿でごめんねー。」
「あいやー。日本語難しいアルねー。」
「うっ、不本意ながらその通りよ。」
と発言・・・、もしかして?
「ちなみに、今発言のあった5人がバカレンジャーですわ。
定期考査のたびに平均点を下げている5人ですが、頭は決して悪くありません。
ネギ先生に教えていただければ、きっと学力も上がりますわ。
まぁ、どこかの大平原の小猿さんは、頭悪いので変わらないでしょうけど?」
「な、なんですってー!?あんたと頭の出来は大して変わんないわよー!!」
「な?失礼な!アスナさんと私とでは、大いに実力差がありますわ!」
・・・ま、まぁ、あの2人は放っておこう。
「あの、それで学年最下位っていうのは?」
「ネギ君、いいんちょ達はスルーなんだ・・・。」
「あー、初日のあの大慌てっぷりが可愛かったのにー。
ネギ君が世間ズレしちゃったー、ちょっと残念。」
「えー、ネギ君は今もとっても可愛いよ?」
「まき絵、問題発言だぞー!」
「お姉ちゃん、私もネギ先生可愛いと思うですー。」
「史伽、そこはまき絵を囃し立てるところだって!」
「いや、でもやっぱり美少年ってのは、無垢な所を、一枚一枚服を剥いでいくように育てていくのがいいんじゃない?」
「美砂、なんか親父くさい?」
「ひどっ!?」
「・・・(っていうか、こいつら、教師を普通にスルーかよっ!
まったく、あのお子ちゃま教師を筆頭に、相も変わらず、変人共のクラスだな。
というか、へぇ、バカブラックが居心地悪そうにしてやがる。
こいつが、自身の話題でこんな反応は珍しいな。
あのがきんちょに気でもあるのか?)」
「?何ですか、千雨さん。」
「さーな、自分の胸に聞いてみな。」
「す、すいませーん、皆さん、すとーっぷ、すとーっぷ。
えーと、のどかさん、学年最下位って何のことだか、教えてもらえますか?」
「あ、は、はいー、えとですねー。
2−Aは、そのー、ずーっと定期考査のクラス順位が最下位なんですー。
す、すいませんー、私の頑張りが足りないからですー。」
「いえ、のどかさんのせいじゃありませんよ。
のどかさんはとっても頑張ってますし、成績も良いです。
僕も鼻が高いですよ。」
なるほど、皆さん個性的でマイペースな方々が多いみたいだし、定期考査でも普段と変わらないのかな?
「そうなんですか・・・、分かりました。
僕も尽力しますので、皆さん、最下位脱出と言わず、学年トップを目指しましょう!
まだまだ、数日のお付き合いですが、皆さん、とっても優秀な生徒達です。
ほかのどこのクラスにも劣りません!
それが、最下位に甘んじてるだなんて、勿体ないと思います!!」
「お、ネギ君、強気―!いいねー、燃えてきちゃったよー。」
「ま、褒められて悪い気はしないねー、ま、ネギ先生の期待には応えなきゃー。」
「あらあら、ネギ先生もやっぱり男の子ね。勝負事には負けたくないのよね?」
「ちづ姉、それって何か危ない発言みたいに聞こえるよー。」
僕の意見に、話を聞いていた生徒たちの幾人から、肯定の返事が聞こえてくる。
「でもさ、そうなるとやっぱりネックはバカレンジャーだって!」
「お、お姉ちゃん、そんなはっきりと・・・。」
「ううう、返す言葉がないよ・・・、ゆーなー、たーすけーてー?」
「まき絵はテストに出て、0点取らなければいいんじゃない?」
「ひどいよ、ゆーなーー!?
いいもん、ネギ君の補修いっぱい出て見返してやるから!」
「楓姉も頑張るですー。」
「んー、そうでござるな。まー、やってみるでござるよ。」
「じゃあ、古は私に任せるネ!偏差値48の浪人生でも東大に受かる超強力な薬があるネ!」
「いえー、ここはやっぱり、脳改造かとー。」
「え、遠慮しとくアルー!!」
「そーなると、アスナにも頑張ってもらわんとなー。
アスナー、いんちょー、喧嘩ストップやー。」
「ん、どしたの、このか?」
「このかさん、どうしましたか?」
「あんなー、ネギ君が学年トップ目指すってー。」
「んまぁ、さすがネギ先生!お志が高くいらっしゃいますわ!」
「ふーん、ま、目標を決めるのは悪いことじゃないわよ。」
「だから、アスナ、ガンバらないかんえー。」
「・・・どうして私限定なのよ・・・」
「夕映はまぁ、聞くまでもないもんねー。」
「ゆえー、一緒にがんばろーねー。」
「まぁ、勉強はイヤですが、協力はするつもりです。」
「皆さん、ありがとうございます!
補修は皆さんの負担とならない範囲でやるつもりですので、無理して参加する必要はありません。
僕も皆さんが楽しんで勉強できるよう、色々考えていきたいと思ってますので、協力お願いします!」
「それでは、今回のテストは普段真面目にテスト受けてらっしゃらない方たちも、きちんと勉強して下さい!」
いいんちょさんの号令にやれやれ、とかしょーがないなー、と応えてくれた
釘宮さん、長谷川さん、桜咲さんといった生徒達も協力してくれるみたい。
よーし、皆もやる気を出してくれたんだ。それを継続させられるよう精一杯フォローしていかないとね!
その日の夜。
放課後の補修では、大体満足のいける指導が出来、手応えをつかんだ僕は意気揚々と部屋に帰ってきた。
そこで、学校の勉強とは異なる、もう1つの勉強を唯一の生徒に教えることになった。
それは、魔法。
兼ねてからの約束の通り、夕映さんに魔法について教えることにしたのだ。
だけど、僕はどうしても言っておきたいことがあった。
だから、2人だけで話をしようと予め言っておいたのだ。
2人で軽く目配せして、別々に外に出る。
自室を出てから合流し、中庭まで行くと誰も居ないのを確認した。
それから、夕映さんを見る。
心なしか、いつもよりわくわくというか、興奮しているようで、夕映さんがどれだけ魔法に興味を持っているかがよく分かる。
・・・だけど、やっぱりその前に、これだけは言わないと。
「夕映さん、魔法って何だと思いますか?」
いきなりの質問に夕映さんは多少面食らった感じだったが、すぐに答えを返してくれた。
「魔法とは、私たちの日常とは異なる、異質の力です。
魔法を使う、ということが何を意味するかは分かりませんが、
その非日常を守るため他者の記憶を奪うことも已む無しとするところから見て、
踏み込むだけでなんらかの危険を伴う可能性がある、そう思っています。」
今度は僕が面食らう番だった。
「ほぼ100点の回答です。
こちら側の世界には、様々な危険が付きまとっていると言っても過言ではありません。
夕映さん、もう一度聞きます。
興味半分に足を突っ込むことで、危険に巻き込まれてしまう可能性は大きいです。
それでも、こちら側に踏み込まれますか?」
「ええ、もちろんです。
興味半分という所を否定することは決して出来ないでしょうが、それでもこの非日常に胸躍る思いは本物です。
学校のつまらない授業などより、余程充実して過ごすことが出来そうです。」
「そ、そうですか・・・、つまらない、ですか・・・。」
「あ、いえ!決して、ネギ先生の授業がどうこうという訳ではなく、ですが、それでも、あの、その、失言でした。
申し訳ないです、猛省です。」
「くすくすくす、いえ、冗談ですよ。
・・・夕映さんが、それを分かっていて下さるなら、僕は止めません。
本当は止めるべきなんでしょうが、僕も『魔法使い』の夕映さんを見てみたくなりました。」
「な!?あ、そ、そうですか、・・・それは嬉しいです。」
ん?夕映さんの顔が真っ赤になっちゃった、寒くなってきたのかな。
「それでは、時間もあまりないことですし、今日のところは簡単な説明だけにしておきましょう。
細かい所や、魔法の歴史、詳細な原理などは後で教本を渡しますので、そちらを見てください。
後で質問があればお答えいたします。
取り敢えず、魔法を実際に使うにあたって必要かと思われる知識を教えておきたいと思います。」
「は、はい!」
夕映さんが身を乗り出してこちらに意識を集中させてくる。
「まず、魔力にはマナとオドの2種類があります。
マナとは、四大、光、精神といった森羅万象、万物に宿るエネルギーのことです。
それを呼吸するように体内に取り込み、自身の魔力、すなわちオドと結着させることで、安定させます。
さらに、取り込んだマナの種類に合わせた呪文を唱えることで、そのエネルギーを世界に対して影響を与えられるものに加工する。
一般に、この流れを行う者を魔法使いと呼びます。」
「なるほど、四大とは、いわゆるエーテルやダークマタと呼ばれるものですか。
物理法則に干渉されない物質であり、それでも物質として機能を果たすという。」
「ええ、その通りです。
そして、その流れのため、物理的に影響を与える魔法は比較的難しく、心に作用する魔法は容易に覚えることが出来るとされます。
しかし、初心者のうちは、心という曖昧なイメージを掴むことが難しいため、逆に物理的に影響を与える、
火や風といった簡単な呪文で魔法の発現を体に覚えさせる必要があります。
あと、言霊を使うにあたって、神話にある知的技術の発達になぞらえる形でも、火の呪文からはじめるのが良いとされています。」
「では、言霊を使うということは、もしかして、私がイメージしやすい言葉で呪文を唱えた方が良いということですか?」
「いえ、それもありますが、力ある言葉として長い間使われてきた言葉にはそれだけで大きな意味を持ちます。
それだけに、初めのうちはみんな統一された始動キーを用います。」
「始動キーとは?」
「簡単に言うと、これから魔法を使いますという宣言です。
マナを取り込むための呪文と考えてもらっても構いません。」
そこまで言ってから、持っていた初心者用の杖を夕映さんに差し出す。
「魔法を使うためには、必要な物が3つあります。
術者、魔法発動体、呪文です。
そしてこれが、魔法発動体となる杖です。
まぁ、いわゆる触媒と考えてもらえば良いと思います。
この杖の一点に集中するイメージで呪文を唱えます。
まずは、先ほどの話にもあったように、火を灯す呪文です。」
夕映さんに渡したのと別の杖を持ち、続けて呪文を唱える。
「プラクテ ビギ・ナル アーデルスカット!」
かざした杖の先に小指ほどの小さな炎が燃え上がる。
「まぁ、こんなものよりライター使った方がよっぽど早いんですが、練習用の呪文ですね。
それでも、フツーは発動までに何ヶ月か掛かります。」
「何ヶ月、ですか。」
まじまじ、と僕の灯した火を見つめる夕映さん。
「ええ、これだけは反復練習あるのみ、ですね。
ああ、あとこれも差し上げます。
僕も魔法学校に入学する際に使った『初等魔術のための教本』です。
英語の本で恐縮ですが、それを少し読んでみて下さい。」
それから、少しだけ夕映さんの練習に付き合った。
イメージングについては繰り返し練習して少しずつ形にするしかないので、
いきなり炎が灯ることはなく、発動しない魔法に恥ずかしそうにしていた夕映さんだった。
だけど、終始楽しそうな夕映さんを見ていると、僕も初めて魔法が発動したときのことを思い出す。
・・・あの6年前の雪の日から、僕の魔法はただの道具になっていた。
それが少し寂しかった。
もしかして、と思った。
夕映さんに魔法を教えることは、僕自身、魔法を見つめ返す良いきっかけになるのかもしれない。
だから、きっと僕は感謝しているのだろう。
・・・ありがとうございます、夕映さん。
結局、その日のうちに劇的な進歩が見られる訳も無く、練習を1時間程度で切り上げて部屋に戻ることにした。
授業、補修、魔法授業とこなした僕はさすがに疲れ果てていたのか、
あっさりとソファーを改造した簡易ベッドで眠りこけてしまったのだろう。
ほとんど記憶に残っていない。
翌日、早めに目を覚ました僕は、勉強机に明かりが点いているのに気がついた。
こんな朝早くに、誰だろう・・・?
そこには大きなクマを作った夕映さんが、僕が起きだしてきたのに気づいた様子も無く、ただ一心に何かの本を読んでいた。
「夕映さん・・・?」
僕は思わず恐る恐る尋ねてしまう。
「ふぅ・・・、やはり、あとは直接聞いてみなければいけないですね。
ミニステル・マギ、パクティオー、そしてアーティファクトですか。
個人の素質に見合った独自の魔法アイテム、アーティファクト。
これを手に入れられれば、私が目指すところも見えてくるかもしれません。
しかし、魔法使いのパートナーですか、ネギ先生の・・・はっ、わ、私は何を考えて、って!!
ね、ねねねね、ネギ先生っ!?」
「あ、気づいてくれましたか。
おはようございます、夕映さん。」
「あ、は、はい。おはようございます。」
「もしかして、寝ずに僕があげた本を読んでいたんですか?」
「え、ええ・・・、おかげで一通り目を通し終わりましたが。
さすがに、辞書を使いながら、一晩で英文を読むのは・・・疲れます。
ですが、それだけの収穫はありました。
あの、ネギ先生、今日の放課後、少し付き合ってもらいたいんですが?」
「は、はい、それは構いませんが、すごいですね、たった一晩で読んでしまうなんて。
お体は大丈夫なんですか?」
「ふふふ、問題ありません。
これぐらいは日常茶飯事ですので。」
・・・そうなのかなぁ?まぁ、僕もよく徹夜しちゃうから、人のこと言えないんだけど。
その後、起きだしてきたハルナさんものどかさんも夕映さんの様子を見ても、
軽く「大丈夫?」と尋ねただけなのを見ると、本当に日常茶飯事らしい。
朝のホームルームが始まる頃になると、夕映さんはさすがに限界が近づいてきたらしく、
終始頭をふらふらさせて非常に危なっかしい。
さすがに我慢が出来なくなり、
「夕映さん、大丈夫ですか?無理せず、保健室で休んでいても構いませんよ?」
と尋ねた。
「い、いえ、そう言う訳にも・・・・。
うぅ、眠いです。」
「いやー、色々手伝ってもらって徹夜させても、夕映はあんまりガタがこないんだけどなぁー。
何気なく、体力あるゆえがこんなに疲労してるとは・・・ん?何かあったっけ?」
「い、いえ、ネギ先生に英語の本を借りまして・・・、訳しながら一晩で読破したらこの有様です。
ううぅ・・・猛省せねば。」
「・・・先生、私も見てますんで、無理そうなら和泉に保健室に連れて行ってもらいます。」
「長谷川さん、ありがとうございます。
夕映さん、無理はしないで下さいね。
それでは、ホームルームを終わります。」
さすがに補修には夕映さんは参加させず、帰って少しでも眠るように言付けた。
僕が補修と事務作業を終え、寮に帰ってくると、夕映さんは少しは復活したらしく僕を待ち構えていた。
「さぁ、ネギ先生、行きましょう。
残念ながら、興奮してしまって、ほとんど寝られなかったです。
ですが、それでも少しは休めましたので、問題ありません。」
目を爛々と輝かせる夕映さんを止めることは出来そうにないと判断した僕を、
そのまま夕映さんは寮の裏庭まで引っ張っていかれた。
「それで、夕映さん、聞きたいことって言うのは?」
「はい、実はこの本に載っていたことなのですが。」
そう言って、初等魔術のための教本を僕に見せる。
「アーティファクト、というものがあると書いてありました。
なんでも、個人の素質に合わせた特殊なマッジクアイテムで、
伝説クラスとも言える道具が出ることもある、と。
魔法使いの従者、パートナーとなることで手に入るそうですね。
原則1名の生涯を共にする護衛者らしいですので、それに選んでほしいとは言えません。
ですが、仮契約と呼ばれるシステムを用いることで、容易にそれを手に入れることが出来るそうです。」
「ええ?僕も知らなかったのに、夕映さん、そんな細かいとこまで?」
って、僕、そのこと知らなかったや。
うう、魔法2日目の生徒に教えられる教師って・・・。
「まぁ、どうすれば最も効果的に魔法を学べるのか、といった観点から本を読んでましたので。
ネギ先生の場合は、自分で自分と仮契約するわけにもいきませんし、パートナー自体はまだ早いと思いますから、読み飛ばしてしまったのでしょう。」
「はは・・・、お恥ずかしい限りです。
でも、仮契約のやり方は僕も知らないのですが、その方法も載っていましたか?」
「ええ、最もポピュラーにして、簡便な方法があるらしいです。
契約の魔方陣を書き、その上に魔法使いとその契約者が立つ。
後は自動的に契約が行われるそうです。」
へぇー、そうなんだ。
この魔方陣は・・・心に作用する式と、契約式、術者と契約者を繋ぐ魔力のパス式、それから、これがアーティファクトを作る式かな?
うん、陣自体に問題はなさそうだけど。
「分かりました!
ものは試しといいますし、僕も興味が出てきましたので、やってみましょう!」
魔力を通して、魔方陣を起動させる。
途端に暖かい光が僕と夕映さんを包み込む。
気づくと、夕映さんがフラフラと僕の目前に・・・って!?
(うう、興奮していて気づかなかったですが、身体は限界みたいですね。
・・・やっぱりまだ眠いです。
上瞼と下瞼がくっつきそうに・・・なってきたです。
アレ?この光は・・・なんだかポカポカしていい気持ちに・・・。
あ、ネギ先生の顔がだんだん近づいて来るです。
ネギ先生、近くで見ると10歳とは言え、大人っぽく見えるです。
もっと、近くで・・・、もっと・・・。
ネギ先生の唇、柔らかそう・・・)
「ゆ、ゆえさっ!?
ちょっと、待っっ!!
もっ、んんんっ!!!」
(あれ・・・?
あったかい光が消えちゃったです。
ん、なんだか、夢を見てたような・・・?
とっても気持ちいい・・・?
なんだか、唇が柔らかくて、暖かいものとくっついてるです。
これは・・・?
・・・って!!!)
正気に戻ったのか、慌てて僕から離れる夕映さん。
僕は何が起こったのか、よく分からず、ぽかーんとしていた。
「あ、あぅ、こ、これは・・・」
夕映さんも同様に呆気に取られた顔をしていたが、
ぼっ、っと音を立てて、真っ赤に炎上した。
同時に、薄っぺらい何かが僕と夕映さんの間の視界を遮って、夕映さんのおでこにぺしりと当たった。
それで、ああ、契約は成功したんだな、と思った。
でも、自動的って・・・こういうのは違うと思うんだけど・・・。
いまだに夕映さんはおでこに張り付いてしまったカードを剥がすこともなく、硬直している。
僕自身はというと、抹茶とコーラの味がした何かの感触がしたときから全く動けていなかったのだけれども・・・。
(続く)