アイドルマスターSS本 
『そこにひざまずいて!』立ち読み版


『注:サンシャインクリエイション37(2007年10月8日開催)のオフセット本立ち読み版です。
本編の一部シーンをカットしてお送りしておりますので、
前後シーンが繋がらない可能性があります。ご了承ください』


第1話 『DEAD お@ LOVE』立ち読み版
(登場人物:天海 春香、星井 美希、如月 千早)


入っていった瞬間、あれ?と思う。
いつもなら春香と美希は我先にといったぐらい率先して挨拶を返してくれるのだが、
今日はそれがない。
それどころか、探るような視線を俺によこして来ているのだが、
一体どうしたのだろう?

「春香、美希?
どうした?」

取りあえず分からないことは、尋ねてみる。
今日もこれから収録なんだから、テンション管理は大切なお仕事だ。

「ぷ、プロデューサーさんっ!
どうして私には何にもないんですか!
千早ちゃんばっかりずるいですーっ」
「は、じゃなくって、プロデューサー!
美希にも、美希にもご褒美欲しいのー」

・・・なんのこっちゃ?
千早のほうを見ると、手に何かを持ってごめんなさい、のポーズ。

ってあれ、あの時の指輪かっ!
そういえば、千早にプレゼントを買ってあげた後、
お金も足りないし、春香と美希には給料日後だな、とか考えて、
そのまま・・・忘れていたなぁ。
それがバレてしまったわけか。

とは言え、そういうことなら話は早い。
確かに何かプレゼントしてやろうと思っていたし、
忘れていたのは俺が全面的に悪いだろう。

「よしっ!今日の収録終わったら、春香と美希に何かプレゼント買ってやるかっ!」

財布の中身を考えるとちょっとブルーになるが、
まぁ1人2,3万ぐらいならなんとかなるかなぁ・・・。

「ほんとですかっ、プロデューサーさん!」
「ミキ、うれしーのー」

が、ニコニコと笑う2人を見ると、別にいいかなぁと思ってしまう。
・・・俺って、女で身を崩すタイプかもしれん。気をつけよう。


「じゃあ、プロデューサーさん。
お給料3ヶ月分でお願いしますっ!」
「おいおい・・・それは高すぎだ・・・」

きゃっ、と可愛らしくポーズを決めながらそんなことを言い出した春香に
俺は軽くため息を吐く。
確かにSランクアイドルである春香にはそのぐらいのアクセサリーでないと
引き立たないかもしれないけど、無茶言うなよ・・・。
そんなコイツ分かってねぇ、って顔されても払えないもんは払えんからな。
Sランクになってお給料が大幅アップしたお前たちと違って、
こちとら固定給で給料変わらないんだぞ?

「美希はね、ハ、・・・もう呼び方変えるのめんどくさいからハニーって呼ぶの。
ハニーから婚姻届もらえればそれでいいの」

さて、何を買ってやろうか、そう考えていたときだ。
腰をくねくねさせながら美希が爆弾発言をしやがった。
っていうか、ハニーってこんな場所で言うな!

・・・そろりと顔を上げると、春香の顔が怖いです。
千早、たす・・・・コッチもこえぇ。

「美希、何言ってるのかな?」
「ええ、何だかとっても気になります。プロデューサー?
まさか、美希に手を出したとか言いませんよね?」
「ち、違うぞ!出してない、出してないからな、春香っ!千早っ!」

俺の必死な弁明に、千早がほっと息を吐き出す。

「そうですよね、信じてます」
「・・・全く、さすがに中学生に欲情はしないぞ」

思ったより簡単に千早が信じてくれたので、
少しばかり調子に乗って余計なことまで口からぽろりとこぼれてしまった。

「でもミキ、ハニーと痴漢さんプレイしたことあるの。
おっぱい、触られたの」
汗が止まりません。
「あー、そういえば私もプロデューサーさんには結構胸触られてますよねー?
高校生だからですか?」
冷や汗が止まりません。
「・・・くっ、・・・私はありません」
千早、どうして自分の胸の辺りを見つめてそんなことを・・・。
決して胸の大きさで区別しているわけじゃないんだぞー?
もちろん声に出して言ったら大変なことになりそうなので、
心の中だけでのフォローだが。

「ああ、それから私、
プロデューサーさんを私のお部屋にご招待してあげたこともありますよー。
それで今度はプロデューサーさんのお部屋に連れて行ってくださるんですよねー?」
獲物を目の前にした肉食獣のような目でこっちを見ないでください、春香さん。
「へぇ・・・そうですか?」
千早、だからその目つきは怖いよ?


何でこんなことに・・・もう隅っこで蹲っていたいや、
とまで考えていると、とんとん、と肩を叩かれる。
振り向くと笑顔の美希が立っていた。
いつもと同じセクシーさの中に幼さを秘めた彼女の、
少女の魅力がつまった笑顔。
その普段の笑顔にほっとする。

「ミキはハニーがちょっとぐらいオイタしても許してあげるの」

言ってることは斜め上だが。

「だって、美希は16歳になったらハニーと結婚するんだから、
それまでは大目に見てあげるの」
とパチリと見事なウインクで決めてみせる美希。
言ってることはやはり斜め上すぎるが、
素直に可愛いぞ、反則すぎる。


「何言ってるのかな、この娘は」


春香は、素直に言うと怖い。





第2話 『だいしょうり画策ちう!』立ち読み版
(登場人物:萩原 雪歩、水瀬 伊織)


「雪歩、額を冷やすシートを持ってきてくれないか?
さっき風邪薬を出してもらった所と同じ箱に入ってるからさ」

「は、はぁーい」

どうやら自分のお尻を見られていた所まで冗談だったのだ、
と結論付けた雪歩に仕事を頼み、
完全に先ほどのことを頭から追い出してやろうと画策する。

・・・しかし、雪歩はあんなに騙されやすくて今後社会を渡っていけるのかなぁ。

「貸し一だからねっ、にひひっ」

こっちの娘っ子は別の意味で渡っていけるのか心配だけどな。


「持って来ました〜」
そう言ってプラプラと冷えシートを振ってみせる雪歩からモノを受け取って、
裏面シールをぺりぺりと剥がす。

伊織のオデコ貼ってみたいなぁ、
いやむしろココで貼らないなんて人としてどうだろう、
などと沸々と余計な煩悩がわきあがる。
だがまぁ、そんなこと言い出したら確実に、
『変態っ、ド変態、da変態っ!』
などと罵られることは間違いない。
ただでさえ、先ほどの額という言葉でさえ、ピクリっ、と反応していたのだ、実は。
十中八九確実に暴れる。
・・・耐えろ、耐えるんだっ!俺はやれば出来るっ!


ぺた


「・・・プロデューサー?
一応、一応だけど聞いてあげるわ。
アンタが風邪を引いてるのよね?
それで・・・」

伊織はふるふる、と震える指を自分の顔に向けた。
この後の展開が手に取るように分かるな・・・。

「どうして、私のオデコにくっ付けるのよーーーーっ!」

予想に違わず、がーっ、と怒鳴る伊織。
ああっ、手が勝手にっ!
どうせなら自分の意思でやりたかったっ!
こんなときは社長から授かった、
伊織の癇癪対応マニュアルその1231!

褒め殺しで対応せよ!

「はっはっは、似合いそうだなぁって。
これ普通他人に貼るの難しいんだが、伊織には簡単に付けられたぞ、さすがだなぁ」
取りあえず褒めておく。わざわざ火に油を注ぐ必要もあるまい。
「ぷ、プロデューサー?それ・・・褒めてないですよ?」
「え、そう?まっさかぁ、そんなわけっ?」
「雪歩、正解っ!」
伊織の掛け声とともに、俺の顔目掛けてクッションがぽかり、とぶつけられる。
「全くっ、何すんのよっ!
ホントにイイ年してガキなんだからっ」
そうプリプリと怒りながらも、新しいのを開けて俺の額にペタリと貼り付けてくれる。
「あ、ありがとな・・・」
貼り付ける時に、俺の顔のすぐ横を伊織の整った顔が通り過ぎた。
ふわりと香る伊織の爽やかな香りが心地よい。
「体調悪いときぐらい殊勝にしなさいっての。
私だって、そのぐらい弁えているわよ」
それでクッションを投げつける程度で抑えてくれたのか、
普段だったら蹴りがとんでくるからなぁ。
でも、伊織が今日来たときにやられたときは容赦無かった気が・・・って言うか、
さっきも蹴られた気がする。

「私を構う分にはそのぐらいにしておいてあげるからさっ・・・」

「何か言ったか?」
伊織がぼそっ、と何かを呟いたようだったので、聞いてみたのだが、
伊織はぶんぶんと手を振ってなんでもない、とアピールを返してきた。
「な、何でも無い、何でも無いわっ!」
声に出しても何でも無いとアピールしてきた。
「ま、まぁ、伊織がそこまで言うんなら別にいいんだが」
あまりの伊織の動転ぶりにさすがの俺でも引くわ。


俺が紆余曲折の末貼り付けたシールの冷たさを堪能していると、
雪歩がぼそりと呟いた。
「伊織ちゃん、それ、外さないの?」
「へ?何が?」
きょとんとした顔を浮かべる伊織。
・・・まさか、気付いてない、なんてことはないよな?

「だから、あの、・・・オデコの」

恐る恐る伊織のオデコを指差しながらの雪歩の指摘に、
ぺた、と自分のオデコを触って確認する伊織。
違和感を感じたのか、オデコの周りをペタペタ。

・・
・・・
「あーーーーーーーーーーっ!」

伊織、大絶叫。

「ご、ごめんねっ!今、言っておかないとダメかなっ、って思って」
「雪歩、謝る必要はないぞ。お前が悪いんじゃないのは明白だ」
「・・・そうね。雪歩は!
謝る必要はないわよね?
じゃあ、謝る必要があるのは誰かしらっ?」
「きっと、妖怪冷え冷えさんの仕業だな。
丁度良いサイズのオデコを見ると貼らずにはいられないという・・・」
「そりゃ、アンタだっ!」
今度こそ伊織の蹴りが飛んできた。
布団に包まった身では防御も回避もままなりゃしないんですけどっ!

ばきっ!

「わ、弁えてるんじゃ無かったのか・・・」
ぴくぴく、と布団に突っ伏して震えながら呟く俺に、
「アンタこそ風邪引いているんなら、程度をわきまえなさいっ!」
伊織の怒鳴り声が聞こえる。
・・・まぁ、確かに調子に乗ってしまったかもしれん。
いかんな、これで体調崩して明日も休む訳にはいかん。

「もうちょっと、優しくしてくれてもいいじゃない・・・、雪歩には優しくするくせに」

ブツブツと伊織が呟いてるが、まぁ、丸聞こえなんだが。
でも、そうかもしれないなぁ。
伊織からかうと面白いからついついやってしまうけど、
心配してわざわざ訪ねてきてくれた相手に失礼極まりなかったかもしれん。
・・・非常に今更かもしれんが。





第3話 『はじめてのおるすばん』立ち読み版
(登場人物:高槻 やよい、双海 亜美真美)


「よしっ、やよい!
行って来い!」
俺はやよいの背中をトン、と押してやる。

「うんっ、行ってくるねっ、お兄ちゃん!」
やよいが飛ぶように走る。
おいおい、そんなに走ると転ぶぞー?
さて、俺も様子を見に・・・

「にっひっひっひ」

・・・マテ。
だ、誰もいませんように、と祈りながらも声のした方を向く。


「誰も居ない?」


俺の祈りが天に届いたのか、
振り向いた先には人影は全く見当たらなかった。
きょろきょろと辺りを見回す。
というかこういう場合は・・・

「上か後ろだ!」

ばっ、ばっ、と素早く視線を送るが、誰もいない?

「残念、下だ→っ!」

とばしっ、とアッパーが俺の腹部に突き刺さる。
「ごぶはぁ!」
さすがに悶絶する俺。
み、鳩尾・・・
「あはは・・・兄ちゃん、だ、大ジョブ?」
「ま、真美ぃ!」
プルプルと震える足でなんとか地面を踏みしめる。
「おお、兄ちゃん、何だか昨日テレビで見た、生まれたての子鹿みたい→っ?」
ぅおいっ?
「ああ、ごめんごめん、そんなに良い所入るなんて思わなかっただけだって→っ?
真美と兄ちゃんの仲でしょ→?
笑って許して→?」

・・・全く、調子が良いんだからな。

「はぁ、まぁいいよ。で、何か用か?」
「うんっ!え→っと、あれぇ?」
額に人差し指を置いてぐるりん、と指を回転させる真美。
これはもしや伝説の・・・
「忘れちった」
「はぁー、お前、年誤魔化してないか?」
「そんなわけないじゃ→んっ!」
ぶーぶーと文句を言う真美。だがなぁ・・・
「とりあえず、暴力を振るった罰を受けてもらうぞ」
伝説には伝説だ。
真美のこめかみをそっと、両手の握りこぶしで押さえる。
「へ・・・?」
「うめぼしっ!」


「あぎゃぎゃぎゃああああ――――っ」


真美の悲鳴が響き渡った。
ま、こんなことは日常茶飯事だから誰も慌てたりしないだろ、多分な。



少しして、真美の頭を解放してやると、早速真美が噛み付いてきた。
「ひどいよ、兄ちゃん→っ!
超→痛かった→っ、ぶ→ぶ→!」
「おだまりっ」
なぜかお姉口調だ。

「でも、お陰で言いたかったこと思い出せたよ→」
・・・まじすか?
「兄ちゃん、やよいっちと何してやがった→っ?
何かイイふいんき出してたぜ→?」
・・・雰囲気とも言えないヤツに勘ぐられるとはっ!
一生の不覚だ。反省。
だがまぁ、真美にも話しておくか、さっきの夜ご飯の話は断らないといけないからなぁ。


「うんうん、そいつはイイことをしたねぇ」
俺からの説明を聞き終えると、
さめざめと涙を流しながら真美がコクコクと頷く。
どうでもいいが親父くさいぞ?
「おいちゃん、今時珍しい人情物語に感動したっ!
いいぜっ!今日はやよいっちの所に行ってやんな!」
お前がおいちゃんなら、俺は爺さんだな。
そう冷静に突っ込んでやりたくもあるが、
まぁ、ここは物分りの良い真美に感謝を込めて乗ってやることにしよう。

「あ、ありがとうごぜえます、お侍さま!
せめて、貴方のお名前を・・・?」
「ふっ、いけねぇぜおぜうさん。
この根無し草に名前なんてあるわけあんめぇ?」
べらんめぇ口調が日本一似合う小学生になりつつあるな、しかし。
「いいぜ、人に会ったらこう伝えな。
このジェミニの真美が慈悲を与えたとなっ!」
いきなり星の聖なる闘士になったな、しかもゴールドか・・・。
というか、名前も名乗っているぞ?
っと、いかん、そろそろ本番見に行かなきゃな。
「真美、俺は本番見てくるけど、亜美への説明頼んだぞ?」

「はぁ→い、いってら→っ。のしっ☆」

のしって・・・またどこかで影響受けたな、多分。